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「激戦」
 ダンテ・ラムの男臭い世界には、やはりキラキラしいスターよりも地味~演技達者な俳優が似合う‥‥ということで、「密告者」でニック・チョン張家輝くんと出会ったのは彼の運命だったのに、大資本で撮るとなったとき目がくらんでジェイチョウなんかにしちゃったのがイカンかったのですよ、やっぱり。
 と、いうくらい「輝くんじゃないと成立しなかったであろう」物語でした。
 大金持ちの息子役のエディ・ポンの演技が青いのは織り込み済みで、だから彼のドラマは外形の説明だけして心内演技をさせない、という大英断も成功のひとつ。だから、かえって素直に彼が格闘選手権に向かってのめりこむ姿を観て、好意的に応援することができました。あれでミョーにぐだぐだ心のうちを語られてたら、かえって反発したかも。

 お話は、ダンテ・ラム監督の熱愛する格闘技の世界。アンディ・ラウの「ファイターズ・ブルース」、ヴァネス・ウーの「スター・ランナー」ときて、「……もういやだっ。キラキラしたスターでは、俺の世界が表現できない!」と思ったんでしょうかねえ。地味~な外見にソラ恐ろしい演技力をあわせもった輝くんを何がなんでも主役にしようと、撮影前にメチャクチャなトレーニングをさせ筋肉ムキムキにしてしまう、という荒業を使っています。(アンディ・オンもそうだけど、後天的についた筋肉って見栄えがするんだよね‥‥)
 舞台をマカオにしたのは、もちろん正規の格闘技選手権が派手に開かれているという設定になじみやすいからでしょうけれど(
香港でもあるけど、派手じゃないし人気もあまりないんです。街なかでは賭けも禁止だしね)、静かな街並みもお話のしっとりさ加減にあっていってよかったです。全体に抑えたトーンだったので、のちに輝くんがマカオの観光地を次々に回ってトレーニングしても(なんと、大三巴の階段でもトレーニングする!あんなにたくさんの観光客はどこへ!?)(笑)あまりおかしな感じにはなってませんでした。
 輝くんが演じるのは、かつて香港でチャンピォンだったけど、カネのために八百長をしたところから黒社会に飲み込まれ、借金に追われてマカオに逃げてきた男。宣伝では、その彼と破産した大金持ちの息子エディ・ポンが出会って師弟関係になり、格闘技に挑む‥‥のがメインみたいに報道されてたけど、映画を観た人の心に残るのは、輝くんと、精神のおかしくなってる母を必死で守るケナゲで気のつよい小娘の、心の交流の部分でしょう。娘の演技も素晴らしくて、もう胸がきゅんきゅんします。格闘も、もちろん素晴らしいのですが、私はあの二人の愛らしくも切ないやりとりをもっと観ていたかったです。出会いのシーンで輝くんの足を思いっきり踏んづける娘と、別れの場面で「足、踏めよ」といって、両足の甲の上に娘を立たせて抱きしめる輝くん‥‥あ、いかん。また涙が出てきた。

 唯一おかしいのは、二十代の輝くんを若い俳優が演じてること。けれどこの俳優がけっこう老成した顔をしているせいもあり、輝くんがいつにも増して童顔に撮られていることもあり、「……別に輝くん自身に若い頃も演じさせていいんじゃないスかね?」と苦笑してしまうところ。ダンテ・ラムものちに「掃毒」で輝くんが若作りして自分で昔の自分を演じ切ってるのを観て、「あ、しまった」と思ったかもしれません。


 
| 星野ケイ | 星野ケイ | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |